「創業100年で、今も店主が現役で厨房に立っているラーメン店を探してほしい」——テレビ番組ディレクターからこの依頼を受けた時、フリードは「これは面白い」と感じた。単なる「老舗店取材」ではなく、「創業100年×現役100歳店主」という二つの100が重なる奇跡の店を探す旅だ。東北を舞台に繰り広げたこの食リサーチの全記録を公開する。
依頼の詳細と「不可能に近い」条件の整理
依頼元はBSドキュメンタリーの制作プロダクション。「100年の味」をテーマにしたグルメドキュメンタリーシリーズの第3弾として、「創業から100年以上続く老舗の食堂・ラーメン店」を全国から探していた。追加条件は「可能であれば、現在も創業者一族が経営していること」「店主が現役であること」だった。
「創業100年のラーメン店」という条件だけでも難しい。日本のラーメン文化は明治末期から大正期に発祥したとされ、創業100年は1920年代以前の開業を意味する。現存する店舗でその系譜を辿れるケースは全国でも限られる。さらに「店主が現役」という条件が加わると、対象は極めて限られる。
デスクリサーチ:「100年老舗ラーメン」を探す
フリードはまずデスクリサーチから着手した。活用した情報源は多岐にわたる。
- フリード「老舗飲食店データベース」:過去のグルメ番組リサーチで収集した全国の老舗飲食店情報(約3,500件)
- 農林水産省「100年フード」認定リスト:100年以上の歴史を持つ食文化・郷土食・伝統食品を認定したリスト
- 各都道府県の「観光百年老舗」認定制度:東北6県の観光協会が認定する老舗店舗リスト
- 地方紙・地域情報誌のデジタルアーカイブ:「創業○年」の記事を全文検索
- フリード現地リサーチャーネットワーク:東北各地の地元記者・フードライターへのヒアリング
検索の結果、「創業100年以上・ラーメン系・東北在住・現在も営業中」の条件に合致する店舗が7件ピックアップされた。さらに「店主が現役」という条件で絞り込むと2件になった。
山田幸吉さんとの出会い:東北・二つの100
2件の候補のうち、より条件に合致したのが宮城県内陸部の小さな町で営む「やまだらーめん」(仮称)だった。店主は山田幸吉さん(仮名、当時101歳)。大正14年(1925年)生まれで、昭和21年(1946年)に父の店を引き継ぎ、以来80年にわたって一人で厨房に立ち続けてきた。創業は明治43年(1910年)で、2025年に創業115年を迎えていた。
山田さんの店は地元では有名だったが、テレビ取材は初めてだという。フリードのリサーチャーが初訪問したのは12月の平日昼時。雪の積もる日だったが、山田さんは午前11時から厨房で仕込みをしていた。101歳とは思えない動きの速さと、長年培われた手技の確かさに、リサーチャーは思わず圧倒されたという。
グルメドキュメンタリーに必要なロケ地確認の手順
「ここだ」と確信したフリードのリサーチャーは、即座にロケ地としての適性確認を開始した。グルメドキュメンタリーのロケ地として確認すべき事項は多岐にわたる。
ロケ地適性チェックリスト
- 撮影環境:厨房・客席の広さ、採光、カメラ設置スペースの確認
- 音響環境:周囲の騒音(幹線道路・工場等)のチェック
- アクセス:撮影機材の搬入経路、駐車場の有無、最寄り交通機関
- 営業形態:撮影可能な曜日・時間帯の確認(営業時間との兼ね合い)
- 近隣への影響:撮影クルーの駐車・作業が近隣に迷惑をかけないかの確認
- 店主・家族の意向:撮影・放送に対する理解度と同意の確認
山田さんの店は、いずれの条件も問題なかった。むしろ、山田さん自身が「ぜひ撮ってください。この店のことを多くの人に知ってもらいたい」と積極的だった点が印象的だった。
撮影許可の取得と条件調整
山田幸吉さんと家族(長男夫婦)との許可取得交渉では、いくつかの条件調整が必要だった。
- 営業への影響最小化:撮影は「定休日」か「営業終了後」に限定することで合意
- 店名・住所の取り扱い:番組内での店名・場所の公開範囲(市区町村名までに限定)
- 出演料:山田さんご本人・長男夫婦それぞれへの出演料を設定
- 放送後の対応:「取材後に客が殺到しても対応できない」という懸念に対し、放送後のサポート体制を提案(制作側が観光協会と連携)
これらの条件を全て合意文書(撮影許可書)に明記し、双方が署名した。フリードはこの過程全体をコーディネートし、撮影から2週間後に無事番組の撮影が完了した。
まとめ:グルメ番組リサーチの本質は「物語の発掘」
山田幸吉さんの店を探したこのリサーチが教えてくれたのは、「グルメ番組リサーチは食の情報収集ではなく、食に宿る物語の発掘だ」という真実だ。101歳で現役の店主が80年間一人で守り続けてきた一杯のラーメンの中には、時代の変化・家族の歴史・地域の記憶が凝縮されている。それを発見し、番組に届けるプロセス全体がフリードの仕事だ。グルメ番組リサーチ・老舗取材でお困りの方は、フリードにご相談ください。
■ このリサーチのポイントまとめ
- 「創業100年×現役店主」という二重条件を全国3,500件超のデータから2件に絞り込み
- 農林水産省「100年フード」リスト・東北6県老舗認定制度等を横断検索
- ロケ地適性は撮影環境・音響・アクセス・店主意向の6項目でチェック
- 放送後の「客殺到問題」への事前対策も合意文書に明記
- グルメ番組リサーチは「食に宿る物語の発掘」がフリードの核心価値