企業の100周年記念CMは、「創業者の物語」をどこまでリアルに伝えられるかが勝負だ。しかし創業者が故人であり、会社の歴史資料が整理されていない場合、どこから手をつければいいのか?フリードは広告代理店B社からの依頼で、食品メーカーC社の創業者(明治末期に没)のストーリーを古文書・遺族インタビュー・歴史資料のデジタル化を通じて再構築した。本稿ではその全プロセスを公開する。
依頼の経緯:広告代理店B社からの協業要請
2024年秋、広告代理店B社のプランナーからフリードに連絡が入った。担当するクライアントは食品メーカーC社(詳細非公開)。2025年に創業100周年を迎えるにあたり、秋の大型テレビCMで「創業者の物語」を軸にしたブランドムービーを制作したいという企画だった。
しかし問題があった。C社の創業者は明治末期に他界しており、社内には創業者に関する資料がほとんど残っていなかった。わずかに「明治43年(1910年)創業」という記録と、経営者一族の家系図(不完全)があるだけだった。代理店のプランナーは「創業者の顔・名前・エピソードを"実感"として伝えたい。でもどこを調べればいいか分からない」と言った。
広告リサーチにおける企業ヒストリー発掘の手法
フリードが「企業ヒストリーリサーチ」として対応するこのタイプの依頼は、近年の周年企業案件でも増えている。基本的な調査手順は以下の通りだ。
Step 1: 一次資料の特定と収集
「一次資料」とは、その時代に実際に作られた文書・写真・映像・記録のこと。企業ヒストリーリサーチでは以下を調査する。
- 国立国会図書館デジタルコレクション:明治・大正時代の商業関連資料・人物名鑑・地方史を検索
- 法務局の法人登記:創業時の商号・代表者名・所在地を確認(古いものは廃棄されている場合あり)
- 地方公文書館・博物館:都道府県・市区町村の公文書館に商工業者の記録が保存されているケースがある
- 当時の新聞縮刷版:明治・大正期の地方紙に創業者の記事が掲載されていることがある
- 業界団体・組合の記録:業界の歴史書や100年史に創業者が記載されているケース
Step 2: 遺族・縁者へのインタビュー
文献調査と並行して、創業者の遺族・縁者へのインタビューを行う。C社の場合、経営者一族の家系図をもとに、現在の会社役員の曾祖父にあたる人物が創業者と特定できた。その親族(80代の女性、創業者の孫娘)に連絡を取り、インタビューを実施した。
インタビューで浮かび上がったのは、創業者が明治末期の不況の中で食品加工業を立ち上げた経緯、「人が食べるものは絶対に誤魔化してはいけない」という信念、そして当時の工場の写真(遺族所蔵のアルバムから)だった。
Step 3: 歴史資料のデジタル化と権利処理
遺族が所蔵する古写真・手書き文書をデジタル化する際には、著作権・所有権の処理が必要だ。フリードは遺族と代理店・C社との三者合意書を作成し、CM使用のための「使用許諾」を適切に取得した。デジタル化作業は専門のスキャニング業者と連携し、明治時代の写真の高解像度化にも対応した。
発掘した「創業者の物語」:5つのエピソード
3か月のリサーチの結果、C社の創業者に関する以下の5つの核心エピソードが判明した。
- 創業の動機:明治末期の食品偽装事件(当時の社会問題)を目撃し「本物の食品を作る」と決意して起業
- 経営哲学:「原料の品質が命」と語り、仕入れ先農家との直接取引を確立した(現在のC社の直仕入れ方針の起源)
- 工場建設:資金不足の中で地域の農家・商人から資金を集め、大正2年に初の自社工場を建設
- 関東大震災(1923年)の対応:震災直後に工場の食品在庫をすべて被災者に無償提供した記録(地方紙に記事あり)
- 経営継承:没前に長男に「お前が守るべきは商品の品質と社員の生活だ」と言い残した(遺族伝承)
これらのエピソードは、広告代理店B社のクリエイターが「CM脚本の骨格」として使用できる内容だった。特に「関東大震災での無償提供」は、一次資料(新聞記事)で裏付けられた事実であり、CM内でのファクトとして使用できる強みがあった。
CMへの落とし込みと著作権対応
フリードが提供したのは「リサーチレポート」だけではなく、CM制作に必要な全素材だった。具体的には以下の通りだ。
- 創業者プロフィール(A4・5枚):生年・略歴・経営哲学・主要エピソードをまとめた内部資料
- 一次資料コピー:新聞記事・古文書のデジタルコピー(出典明記)
- 古写真高解像度データ:遺族所蔵写真7枚のデジタル化・補正済みデータ(使用許諾書付き)
- ファクトチェック確認書:CM内で使用する各フレーズの根拠となる一次資料の対応表
C社の100周年CMは2025年秋の放映後、視聴者から「創業者の話が本物だと分かって感動した」という反響が多数寄せられたという。広告代理店B社のプランナーからは「リサーチの質がCMの品質を決めた」という評価をいただいた。
まとめ:広告リサーチの未来は「事実の発掘」にある
AI生成コンテンツが氾濫する時代において、「本当にあった物語」の価値は高まり続けている。企業の100周年CMで視聴者の心を動かすのは、精巧な映像技術ではなく、創業者が実際に生きた証拠としての一次資料と、遺族が語る生の言葉だ。フリードは「事実の発掘」という最も根本的な能力で、広告代理店・企業のクリエイティブを支える。CM向け企業リサーチ・創業者ストーリー発掘の依頼は、フリードにご相談ください。
■ このリサーチのポイントまとめ
- 明治末期没の創業者のストーリーを国立国会図書館・地方紙・遺族インタビューで再構築
- 関東大震災での無償提供という一次資料(新聞記事)で裏付けられた核心エピソードを発掘
- 遺族所蔵の古写真7枚をデジタル化、使用許諾取得まで一括対応
- CM内使用フレーズのファクトチェック確認書を提供、放送後のリスクを最小化
- 広告リサーチの依頼は増加中、NDA即日対応・スピード見積もり可